jk_arts_logo_v_n_72ppi.pngクラシック音楽のコンサート・イベントの企画運営・録画録音

Francesco Libetta Piano Recital 彼自身によるプログラム・ノート

 1曲目は“テアトロ・ムジカーレ(喜歌劇)”へのオマージュで、内容は“アンチ・セレナータ”つまり恋人たちの痴話喧嘩です。作曲家レオナルド・レーオ(1694-1744)の作品の印象深い優美さは、今はなきシチリア王国の首都だったナポリの典型的世界を感じさせます。レーオ自身はサレント地方(長靴型のイタリア半島のちょうど踵の部分辺り)のサン・ヴィート・ノルマンニという片田舎で生まれました。私のピアノ版編曲では、喜歌劇『Amor vuol sofferenza(愛は苦しみを望む)』第2幕フィナーレの2曲のアリアから1つのシーンが構成されています。『Lo frate ‘nnamorato(恋する修道士)』を手がけたジェンナーロ・アントニオ・フェデリーコによるレチタティーヴォ付きのアリアのテクストは、罵り合いそのものです。「誰かがあなたを包丁で切りつけりゃいい!」 「誰かがおまえの頭を打ち抜きゃいいんだ!」 「このギターで頭をぶちわってほしいか?」 「顔をこのタンバリンでひっぱたいてほしいの?」・・・こんな調子で恋人たち、すなわち馬車ひきのモスカ(イタリア語で “蠅”を意味する)とナポリの下町ポルティチでパンを売るヴァスタレッラ(“でか顔女”)が、ナポリ弁でこんな調子やり合うのです。
 “La Canzone a dispetto(からかいの歌)”(というより、罵り合いの歌)では、まずモスカがマンドリンの一種であるカラショーネの伴奏で、次にヴァスタレッラがタンバリンとともに歌います。レーオの音楽スタイルは“オペラ・セーリオ”の厳格さはなく、ナポリ楽派らしい明るさに彩られています。また彼が実際には喜歌劇作曲家としてではなく、教会音楽作曲家として広く知られていたことも忘れてはならないでしょう。彼の書いた讃美歌はイタリア統一の初期まで非常に愛されており、ナポリで感銘を受けたワーグナーは、レーオの讃美歌を楽劇『パルジファル』の合唱部分に取り入れています。

 ヴェノーザの王子、カルロ・ジェズアルド伯爵(1566-1613)が作曲した”ガリアルダ”でも、ナポリが舞台です。彼の作品を愛したストラヴィンスキーは、いくつかのマドリガルをオーケストラ用に編曲しています。ジェズアルド独特のスタイルは、彼自身の数奇な人生とも関わりがあるかもしれません。彼は名誉のために妻マリア・ダヴァロスを部下に命じて殺しましたが、そのことが彼の心に深い傷を負わせたことは少なくとも間違いないでしょう。ジェズアルドはルネッサンス音楽の最も実験的かつ表現主義的な作曲家でした。有名な音楽家たちからの批判を恐れず、とりわけ大胆な半音階技法を用いたことは今もよく知られています。

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