クラシック音楽のコンサート・イベントの企画運営・録画録音

Francesco Libetta Piano Recital 彼自身によるプログラム・ノート



 次のソナチネは1世紀後のものです。この時代の作曲家たちは、過去のレパートリーを創造的に創りなおす“ムジカ・アル・クワドラート”と呼ばれる編曲を熱心に行っていました。偉大なピアニストであると同時に傑出した作曲家でもあるフェルッチョ・ブゾーニ(1866-1924)は、フィレンツェで生まれ、後にベルリンに活躍の場を移しました。ソナチネ”カルメン幻想曲”は、すばらしい知性の結晶です。有名なビゼーのオペラ『カルメン』をテーマに、華やかな装飾が繰り広げられ、その並はずれて優れた作曲技法により、まるで映画のシーンが入れ替わるかのように非常にすばやく明快に場面が転換していきます。場面は発展することなく突然中断され、また別の場面へと目まぐるしくとってかわっていく一種の暴力性には、どこかシニカルな印象さえあります。しかし最終部分では誠実な哀感をもって、静かに曲は閉じられます。

 オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)は父マルティーニ・レスピーギと同じくボローニャの出身です。ブゾーニと同年に書かれた”グレゴリオ聖歌による3つの前奏曲”は、ローマカトリックの礼拝式の音楽的伝統(旋法・旋律・ハーモニーや雰囲気)に則って展開され、その厳格な表現に心を打たれます。ピアノという楽器が時代の変遷の中で流行に流されてしまうことなく、また美学的論争や検閲に屈することなく、表現の自由さを保持してきたことは疑う余地がありません。そのためレスピーギは、世間が古典的伝統的な音楽に反発し、時には極端に感情的にそれらを否定し、締め出そうとした時代にあっても、確固として首尾一貫した態度を貫き通したのです。

次へ   目次に戻る